いずれ飲める? 世界初の「木のお酒」
1.いずれ飲める? 世界初の「木のお酒」
様々な種類があるお酒ですが、一般的なアルコール原料である穀類や果実などからではなく、なんと“木”からそれを造ろうという試みがあり、その研究・開発が行われているのをご存知でしょうか?本項ではそんな未来の可能性について解説していきたいと思います。
2.木のお酒の研究
そもそも、数あるお酒ですが、木の香りが含まれた樽酒やリキュールは既にあったものの、木そのものからアルコールを造ったお酒は存在していませんでした。
そこで、茨城県つくば市の“森林総合研究所”が、長いお酒の歴史的にも、世界的にも初の木のお酒を造ろうと研究・開発に乗り出し、2018年4月26日、「木材に食品用の酵素と酵母を加え、アルコール発酵させる技術を開発した」と発表しました。有害物質の有無といった安全性、味の調整、酒税法、税務署の免許取得など、一般に出回るにはまだ課題がありますが、今後3年以内には商品化の目途をつけたいと、研究チームの開発が進んでいます。上手く商品化に成功すれば、日本各地の特徴ある木を活かした新しい産業が生まれ、木材需要の増加、ひいては林業の活性化にも繋がると期待が高まっています。
3.木のアルコールの原理
ちなみに、木とアルコールといえば、一時期話題になった「バイオエタノール燃料」が連想されるのではないでしょうか?
大まかな原理自体はそれとほぼ同じであり、
“木の細胞壁を壊し、そこから微生物が入り込み分解発酵し、アルコールを生成する”という点は同じなのだそうです。
・バイオエタノール燃料としてのアルコール
木材の細胞壁は堅いため分解が容易ではないので、薬剤処理など特殊な処理を施して細胞壁を壊して発酵させるため、安全性的に見て飲料用としては適していません。
・飲料用としてのアルコール
“湿式ミリング処理”という技術で、樹皮を取り除いた木材を天然水に漬け、水中で木材を粉々に粉砕することで、薬品を使わずに細胞壁を壊すことが可能です。そこに酵母などを加え、4日程発酵させると琥珀色の度数2%程のアルコール原液が生成されます。それを更に蒸留させることで、度数15%程の透明なアルコールに仕上がるそうです。
4.木のお酒の味
木材ならあらゆる種類から造るのが可能で、その種類により、風味が変わってくるそうです。
スギ材から造られた「スギ酒」はほのかにスギの香りがし、針葉樹らしいドライな味わいで、
サクラから造られた「サクラ酒」はほのかに甘い香りで、ワインに似たような味わいで、
シラカンバから造られた「シラカンバ酒」は長時間発酵したようなウイスキー樽のような香りで、ブランデーのような味わいがするそうです。
また、ブレンドや、リキュールのように果実などを加え香りをつけることも可能なのだそうです。
5.まとめ
木から飲料用アルコールを生成し、お酒として造り出す研究・開発は今も進んでいます。そう遠くない未来(早ければ3年以内)、一般的なお店でも様々な木のお酒が取り扱われ、私達も実際に飲んで味わえる日が来るかもしれません…。
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